映画レビュー「チェ 28歳の革命」


【ひとこと】
 ドキュメンタリーといってもいいかも・・・

【あらすじ】
 フィデル・カストロの右腕となって働き、キューバ革命を成し遂げた立役者エルネスト“チェ”ゲバラ。彼の28歳から39歳までを前後編で描いた作品の前半部分。1955年7月、メキシコに亡命中だったフィデル・カストロの思想に共鳴したエルネストは、妻・イルダと娘・イルディーダをメキシコに残し、キューバへと潜入する。上陸後、山中でゲリラ戦を展開しながら徐々に兵力を蓄え、1959年、バティスタ独裁政権を倒し、首都ハバナへと侵攻する。

【感想など】
 率直に申し上げて、なんの事前知識もなしに鑑賞すべきではない映画、でした。「チェ・ゲバラって誰?」という方がご覧になってもわけがわからないと思われます。ソダーバーグ監督作品や主演のベニチオ・デル・トロのファンだから、という理由だけで鑑賞するのも危険です。少なくとも前編は、ドキュメンタリータッチの淡々とした作りであり、説明的な部分がほとんどありませんので、退屈に感じられることでしょう。

 映画として語るならば、これは記録映画にカテゴライズされるべきかと考えます。エンタテイメント性は皆無でした。なぜ若きエルネストが革命家を志すようになったのか、この映画ではまったく語られません。現在も世界中で最も愛されている革命家「チェ・ゲバラ」がどのような人間であったのか、一側面を描くものであり、後編と合わせて見て初めて意味をなすものだと感じました。

 私は、この作品を鑑賞する前に、ガエル・ガルシア・ベルナル主演の『モーターサイクル・ダイアリーズ』を観ております。そこでは若き日のエルネストが何を見聞きして社会主義に傾倒するようになるのかが描かれていましたから、『チェ 28歳の革命』がカストロとの出会いからいきなり始まってもさほど驚かずにすみました。

 この作品を鑑賞する前の私の「チェ・ゲバラ」のイメージは、弁の立つ、熱血革命家という程度でしたが、この作品を観て印象が変わりました。非常に先見の明がある、賢い男だったんですね。彼は実に礼儀正しくて、気高い思想の持ち主でした。自らの信念のために命を賭ける勇気がある人です。エルネストは行動力があり、指導力もあり、冷静な判断力にも恵まれていました。皆から慕われるリーダーとしての器を備えた人です。

 劇中に、脱走した元兵士を裁くシーンがあるのですが、そこでエルネストは「我々は農民を尊敬している」と語ります。尊敬する農民に乱暴狼藉を働いてはいけないし、敬意をもって接するべきなのであって、作物や金品を強奪するなどはもってのほかなのです。ましてや危害を加えた者は、死をもってその罪を贖うべきであると、元兵士らを処刑します。意志が強く、自分に対しても厳しいエルネストは、規律違反を決して許さなかったことがわかりますね。

 さらにエルネストは、読み書きを覚えるようにと農民上がりの兵士達に徹底させました。山中を行軍しているときでさえ、自ら勉強を続け、兵士にも算数をやれと教えました。教育を受けられないままの庶民は簡単に騙され、搾取される、という考えの下にたって、将来を見据えた理想を語り続けたわけです。そこにも、チェが尊敬された理由がありました。

 非常にストイックで、高潔な理想を実現するためにはどんな困難も乗り越えてみせる、そういう人が「チェ・ゲバラ」だったのだと感じました。彼の語る「真の革命家」とは、人民や真実への愛を貫く人でした。「祖国か、死か!」と演説をしたことで有名なゲバラですけれど、彼の熱い情熱は、搾取され、弾圧され続ける人民を救うための行動に常に費やされ、その熱は決して冷めることなどありませんでした。理想が高かった彼ゆえに、その後キューバに居づらくなってしまうのですけれども・・・。

 なんにせよ、早く後編を観たいものです。ベニチオ・デル・トロの熱演は、カンヌ映画祭で主演男優賞に輝く価値のあるもの。素晴らしい名演技ですよ。

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