映画レビュー「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」



【ひとこと】
 必死になるほど滑稽な・・・

【あらすじ】
 真夏のある日、山奥の田舎町で、トラックに轢かれて夫婦が死んだ。葬儀には「女優になる!」という夢を追って上京していた長女・和合澄伽(わごうすみか)が4年ぶりに帰ってくる。事故を目撃してしまった喘息もちの次女・清深(きよみ)は、姉にひたすら怯える。姉妹とは血のつながらない兄・宍道(しんじ)と兄嫁・待子はワガママな澄伽にふりまわされる。女優になるためには手段を選ばない勘違い女・澄伽の様子を観察してホラーマンガに描き、新人賞をもらった妹のおかげで、さらし者にされたと恨んでいる澄伽は妹を執拗に虐める。それをとめようとする兄・宍道も、実は澄伽に頭が上がらない。それはなぜかというと・・・

【感想など】
 これ、元々は舞台劇なんですね。登場人物たちのキャラクター設定や、人物相関図が、とても舞台演劇っぽいです。たぶん、映画より舞台のお芝居の方がしっくりきますね。シニカルでブラックなコメディらしいです。

 ストーリーは女優志望の容姿端麗で性格最悪の女・澄伽を取り巻く家族たちのドタバタ劇。佐藤江梨子が主演のはずなんですけど、私には永作博美の独壇場と思えました。永作演じる待子は不幸な生い立ちにもめげずに明るく生きてきた女性。結婚相談所の紹介で東京からド田舎の農家に嫁いできたということなんですけど、暇があると奇妙な人形を作ってるんですよ。それがなんともいえない不気味な人形で、本人は「可愛い」と思っているようです。待子は暴力を振るう夫に、ひたすら従順に仕える女でありながら、心の底では何を考えてるのかさっぱりわかりません。能天気なのか、鈍感なのか、悪気はなさそうで、でも、つかめない女なんですね。演じる永作の力でしょう。単なるオツム緩めな気のいい女に見えないんですよ。私は待子にすんごい底知れない怖さを感じました。

 佐藤江梨子はスタイル抜群で、この澄伽役にはまってます。素じゃないかと思うほど。この澄伽という女は突き抜けた馬鹿なんですね。尻軽だし、ワガママだし、強暴だし、思いやりのかけらもない。顔は綺麗でも恋人にはしたくないタイプ。それが才能もないくせに女優になるためとんでもないことを次々やらかすので、観察してると実に面白いんですよ。妹・清深がホラーマンガにしてしまうのも無理からぬこと。サトエリは下着姿になったり裸の背中を披露したりしてますけど、大胆な艶技というにはほど遠い感じです。濡れ場も元が舞台演劇だからか中途半端。脱いでも色気がないってのは女優として非常に残念な資質ですよ。綺麗なのになぁ。裸の背中が色っぽくないのはたぶんよけいな肉がついてないから。そういえば「さくらん」の土屋アンナも裸の背中は色っぽくなかったなぁ。隠微なニュアンスに欠ける気がしました。

 そうそう、サトエリよりも、妹・清深を演じていた佐津川愛美がよかったですよ。恐ろしい姉に怯えている演技が。顔もめっちゃ可愛いんです。メガネっ子でね、マニアに受けそう。虐められる役、似合ってました。最終的に一番末恐ろしい女はこの子でしたが。そのどんでん返しの部分も、演技上手かったですね。マンガ描いてるときの鬼気迫る雰囲気など、本人が何かに憑依されてるみたいな怖さがよく出てました。

 それにしても、タイトルの「腑抜けども」ってのは登場する男たちみんなですね。女たちはギリギリのところでものすごく「生きてる」のに、男たちはだらしない。ふりまわされてばっかりで。宍道の見せる「愛」が「悲しみの愛」と言えるかどうか、微妙な気がします。永瀬正敏は不器用で朴訥な田舎の兄ちゃんのイメージとちょっと違うんですけどねぇ・・・。まあ、大上段にふりかぶってみせたタイトルは、劇中の女たちのエキセントリックさに合わせたもののような。このタイトルによるつかみはOKでしょう。ただ、映画そのものは変な人たちの変な物語であって、特に最後で感動するとか、内容が深いとか、そういうものではありません。永作博美の女優魂を見たいと思うならオススメです。

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