映画レビュー「アメリカン・ラプソディ」


2004年8月15日

【ひとこと】
 引き裂かれたID。自分の本当の居場所を探して彼女はハンガリーへ・・・

【物語のあらすじ】
 冷戦下のハンガリー・ブダペスト。ピーターとマージット(ナスターシャ・キンスキー)夫婦は、自由を求め、裕福な暮らしを捨ててアメリカに亡命する。上の娘は連れて行けたが、まだ赤ん坊だった下の娘は手違いで里親に預ける事に。

 下の娘ジュジ(成長後をスカーレット・ヨハンソンが演じる)はアメリカ名・スザンヌを与えられ、実の両親に引き取られるが、その時には既に6歳になっていた。アメリカになじめず、ハンガリーの里親を恋しがるジュジ。姉はすっかりアメリカ人になっているのに、ジュジはなかなか英語も話せない。成長してもなお居場所がない感じを抱き続けていた。

 思春期になって、母親に反発し、ハンガリーの養父母を訪ねることを決めたジュジ。再会の感激の後、彼女が見出した真実とは・・・。

【感想など】
 幼い頃のエヴァ・ガードス監督が少女ジュジのモデルであるこの作品。親と子のすれ違いが大きなテーマとなっており、「家族とは何か」や、「自我確立のための通過儀礼的な旅」を描くという側面も持っている。ジュジは幼くして自分の居場所を見失ってしまった少女。彼女がなぜ母親と対立してしまうのか、なぜハンガリーへと旅しなければならなかったのか、その心情が見事に描かれる。

 成長したジュジは「私がみんなを不幸にしてるんだわ」と言うが、実は政治体制など時代の犠牲者であるに過ぎない。元々生真面目で愛情溢れる母マージットが、アメリカへの亡命を決めたのは、家族、特に娘たちへの配慮があったからこそ。ハンガリーの当時の体制が違っていれば、この家族の悲劇は生まれなかったに違いないのだから。

 ジュジの一家が亡命を決めたきっかけは悲しい事件であったが、ジュジ自身が常に探し続けた自分の居場所が実はアメリカにあったのだと気づくまでの経緯、その丁寧な描き方に感心し、時代の生んだひずみがどれほど大きかったかを思い知らされた。

 ブダペストは歴史のある美しい街だ。ジュジが会いに行った養父母も優しくて穏やかな本当にいい人達だった。けれどもジュジが気づかないうちに、彼女はアメリカという国になじんでいた。改めて、実の両親への愛に気づき、自分が取るべき行動もわかってくる。かたくなだった実母も、ジュジに対する愛ゆえの行き過ぎた干渉が過ちだったと、やっとわかる。そして初めて、心からお互いを愛していると認める。

 洋服を手作りし、中古の自転車に赤いペンキを塗ってくれる、ハンガリーの里親夫婦は、貧しくても深い愛でジュジを包んでくれた。広くて新しい家に住まわせ、流行の服を買い与えて、実の両親は彼らなりの愛し方でジュジを受け入れようとした。愛情表現はそれぞれに違っているのだが、愛していることに変わりはない。愛情に優劣はなかった。そこに気づかなかったことがジュジを不必要に追い込んでしまっていた。最後は分かり合えて本当に良かったと思う。

 「ロスト・イン・トランスレーション」で注目を浴びたスカーレット・ヨハンソンは、二つの国と家族の間で揺れる少女ジュジを演じた。内に秘めた激しい感情を母に向かって爆発させる様子など、ナスターシャ・キンスキー相手に堂々と渡り合っていた。

 大切な家族と引き裂かれる悲しみ。今もなお、世界中で繰り返される愚かな過ち。この作品は、決して古びることのないテーマを切り取った1本だと思う。


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