映画レビュー「ボルベール 帰郷」


2007.09.01

【ひとこと】
 女たちの愛と悲しみと憎しみとせつなさが複雑にからみあって織り上げられた物語。

【物語のあらすじ】
 ライムンダ(ペネロペ・クルス)は失業中の夫と、15歳になる娘・パウラと共に暮らしている。明るく働き者の彼女だが、ろくでなしの夫は「血が繋がっていないから大丈夫」などと言ってライムンダの留守中にパウラに手を出そうとする。ずっと実父と思っていた男の思いもよらない言動に混乱したパウラは父を拒絶し、勢いあまって殺してしまった。帰宅後、事の次第を娘から聞いたライムンダ、事件の隠蔽を図る。ちょうどその頃、叔母の葬儀に帰郷した姉・ソーレは、叔母を母の亡霊が世話していたという噂を耳にする。母はもうとっくに火事で亡くなったはず・・・・・。過去の事件の真相は?

【感想など】
 それぞれに苦悩を抱えて生きる、たくましくも美しい5人の女性、アルモドバル監督ならでは、という演出が見事な出来。「オール・アバウト・マイマザー」「トーク・トゥ・ハー」に続く女性賛歌に満ちた作品だった。

 主演のペネロペ・クルスは言うまでもなく素晴らしい。過酷な状況にもめげず、したたかに生き抜こうとする意志の強い女性、それが主人公・ライムンダ。彼女のあっけらかんとした自己中心的な行動は、怒るに怒れないと感じる。なぜだか憎めない人なのだ。いいかげんなことをしても、自然に許してしまう雰囲気が彼女にはある。それは外見の美しさに起因するものではなくて、もっぱら彼女の内面がいわゆる「ラテン系」だから、なのだろう。

 風が強い墓地で掃除をする女達の姿が冒頭で映されるのだが、その映像はそのままライムンダの困難な人生を象徴しているかのようだ。家族と離れ、故郷を棄て、一人で生きようとしたライムンダにも、そこまで追い込まれた事情があり、それは映画を見ていれば次第にわかってくる。つらいことがたくさんあった、それでも生きてきた、一人の女の哀しみは万人に通じる。劇中「ボルベール」を涙ぐみながら歌うライムンダが圧倒的に素晴らしかった!あの1曲に、すべての感情がつまっていると感じた。歌はペネロペ自身が吹き替え無しで歌っているのだろうか?鳥肌ものの凄みがあった。

 ライムンダの姉・ソーレも、母も叔母も娘も、皆が皆、それぞれに「事情」を抱えている。その中でお互いを愛しながら、助け合いながら、生きていく。ともすれば深刻になりがちな「事情」だらけ。けれどアルモドバル監督は暗い重い話に終わらせなかった。駄目な男ばかりが登場するアルモドバル監督の映画の中でも、これはまた格別に救い難いヤツだらけの話であったけれども、その分よけいに女性達の美しさやけなげさ、たくましさが際立って見えた。

 流れる血から芽吹き、生い茂り、花開くのは、女たちの情念なのだろうか?エンドロールの花々が非常に象徴的だった。

写真やレビューがお気に召しましたら、バナーをクリック♪お願いします。
にほんブログ村 写真ブログ デジタル写真へ

ちいさい ねこ♪ のプロフィール@にほんブログ村

コメント

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。