映画レビュー「25時」


「25時  25th HOUR」2005年6月9日

【ひとこと】
 24時間後に収監される男の心情を丁寧に描いた秀作。

【物語のあらすじ】
 舞台は9.11後のNY。麻薬の売人モンティ(エドワード・ノートン)は、麻薬捜査局によって逮捕される。誰かが彼を売ったのだ。収監までに残された時間は24時間。刑期は7年。ムショで待っているのは、考えたくもないくらいおぞましい最悪の待遇だ。後ろ盾になっていたロシアン・マフィアのボス・ニコラスがお別れパーティーをするから来いというので、会場となっている人気クラブへ出かけるモンティ。友人の証券ディーラー・フランクと高校教師・ジェイソンもいっしょに。恋人・ナチュレルをも伴って。誰が彼を売ったのか、収監されたらどうなるのか、モンティの心は激しく揺れ動く。疑惑と焦燥、悲しみ、後悔、そして愛。

【感想など】
 社会派スパイク・リーの製作&監督作品。なんとトビー・マグワイアも製作者として参加。主演エドワード・ノートンの演技が非常に素晴らしい。

 ファーストシーン、黄色いド派手な車で相棒コースチャと共に登場したモンティは、満身創痍のダルメシアンの雑種犬を助ける。ボロボロに傷ついてもなお低くうなり、吼え、噛み付くこの犬、その時のモンティとコースチャのやり取りから「ドイル」と名付けられた。この犬がモンティの「善」の部分を象徴している。血を流しながら、助けようと差し出された手にすらも噛み付こうとする気概。主人であるモンティに捧げる忠誠心もいい。

 フランクを演じたバリー・ペッパー、証券取引所での勝負師の顔がけっこう素敵だ。事態を楽観視しようとするジェイソンに厳しい現実を説くところも、彼の性格がよく出ていた。そして、彼が拳を血まみれにして「I’m sorry・・・」と涙を流すシーン、ここが私はかなり好きだ。男の友情を見事に表現していると思う。彼を信用しているからこそ、ある頼みを口に出したモンティのあおる台詞がまた憎い。収監に伴う苦痛に恐怖を抱いている様子が手に取るように伝わる。それをいたましく感じているフランクとジェイソンの心情も、ひしひしと感じられた。

 ジェイソンについてはメアリー(アンナ・パキン)に対する言動が話の本筋とはさほど関係ないのに印象深い。フィリップ・シーモア・ホフマンはモテナイ君にはまっている。「どうしよう・・・」とやってしまったことを後悔してオロオロする小心なとこなんて、はまりすぎて素なのかと思うくらい。実際に彼とつきあってみたいとは思えないけれども、この作品中ではモンティやフランクとの対比がとても際立っていて、重要な役どころだと思った。それに大人になったアンナ・パキン(「ピアノ・レッスン」でホリー・ハンターの娘を演じた)がけっこうきわどいしぐさもしながら、実は純情だったりするので観ていてにやついてしまった。

 で、この作品、モンティの父親と、モンティとの関わりがものすごく重要なのだ。特に刑務所へ車を走らせるラストシーン。父親の、過去を悔やむ気持ち、息子を思う心が痛い。「この人生はまぼろしだったかもしれない。」という台詞が重い。もしかしたら、このまま逃げおおせて、どこか小さな町に隠れ住み、こっそりと結婚して、家族を持つ、そんなことさえできるのかもしれない。モンティの父親が描いたまぼろし、本当にそうだったらよかったのに・・・。車の助手席で静かに目をつぶり、モンティは身じろぎもしない。腫れ上がった顔で、ぐったりとシートにもたれている。ハイウェイがずっとずっと続けばいいと、とうていかなわぬことなのに、思わず願ってしまう。

 NYはテロによってツウィン・タワーを失い、青い2本の光の塔が夜空を照らし出していた。夜景が実に美しい。劇中、フランクの高級アパートメントからはグラウンド・ゼロが見える。爪跡の深さを容赦なく映すカメラ。青いライトに浮かび上がるのは作業中の労働者達。モンティのトイレでの独白シーンにかぶさって、NYの街角が、人々が、浮き彫りにされる。そこには明らかに相反する感情が仄見える。NYという大都会に対する愛着と嫌悪とでも言おうか。ハドソン川のほとり、ベンチに座って呆然とするモンティの様子や、ドイルを散歩させるジェイソンの姿、ぼんやりと河を眺めるフランク。そして観客は気づかされる。この映画のもう一人の主役は、NYという街そのものだということに。製作者達のNYに対する深い愛が、スクリーンの隅々に溢れていると。

 一度でもNYに住んだことがある人ならば、きっと懐かしく感じるだろう。行ったことさえない私でも、NYという街をいとおしく感じたほどだったから・・・。

この写真やレビューがイイと思われましたら、バナーをクリック♪お願いします。
にほんブログ村 写真ブログ デジタル写真へ

ちいさい ねこ♪ のプロフィール@にほんブログ村

コメント

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。