谷川俊太郎「水脈」によせて

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:2件
  • トラックバック:0件

 水脈
     谷川俊太郎

 逆らえぬ感情には従うがいい
 それが束の間のものであろうとも
 手をとらずにいられぬときには手をとり
 目の前のひとの目の中に覗くがいい
 哀しみと呼ぶことで一層深まるひとつの謎
 生れ落ちてからこのかたの日々のしこり
 そのひとしか憶えていない黄昏の一刻の
 闇に溶けこむ暗がりにうつるあなた自身を
 一人がひとりでしかありえぬとしても
 私たちの間にはふるえる網が張りめぐらされていて
 魂はとらわれてもがく哀れな蝶
 だからときとしてみつめあうしかないのだが
 どんな行動も封じられているその瞬間に
 かえって私たちは自由ではないのか
 慰めの言葉ひとつ浮かんでこないからこそ
 心はもっとも深い水脈へと流れこみ
 いつか見知らぬ野に開く花の色に染まって
 大気のぬくもりと溶けあうだろう

           ~詩集『手紙』より~


 言葉にならないけれど、どうしても相手に伝えたい想いがある、そのようなとき、思わず手をとっていたということがあります。上手く言えたらどんなにいいだろう、もどかしく感じて、でも言えなくて。人ってなんて不器用なんでしょう。言葉ってなんて不便なんでしょう。

 苔生した岩から浸み出す水。その雫はやがて水脈へと流れ込み、大河に注がれ、海へとたどりつきます。そのような自然のままに気持ちも伝わればいいのに。そしていつの日か、花となって美しく咲けばいいのに。





※撮影地:二之丸庭園


「おぉ、この写真いいね♪」と思われましたら、バナーをクリック♪お願いします。
にほんブログ村 写真ブログ デジタル写真へ

ちいさい ねこ♪ のプロフィール@にほんブログ村

コメント

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。