露口

露口

初めて入ったお店、ずいぶん古びた店構えだと、以前通りすぎた時に感じていた。
誰かに連れられて行くのでなければ、縁が無かっただろう、カウンターだけのBAR。
四角いスツールが10席ほど並ぶ店内。
肘の触れ合う距離で座れば、酒瓶の並べられた棚には、さまざまなオブジェが、謂れのありそうな顔で、客を迎える。

マスターは、慣れた手つきでハイボールをこしらえ、私の目の前に置く。
シンプルな形の磨かれたグラスに、淡い色の液体が7分目まで注がれ、揺れている。
まずは一口
      もう一口
              思い込みがほどけるのを感じる。
ウィスキーは苦くて、美味しくない、なんて浅はかな誤解だったと知らされる。

カウンターがへこんでいる。
酒瓶とグラスとマスターの手が、長い年月をかけて、少しずつ削っていったのだ、この堅い木を。
SUNTORYのテーマソングがアレンジを変えながら心地よく流れる。
常連さんたちが楽しげに会話する、小さなBAR。

10年前なら、入れなかっただろうな、ここ。
年をとって、ようやく座ることを許される、そういう場所なんだ。
もちろん、マスターも奥様も、客を選んだりはしない。
でも、自分の歩いてきた道を問われているかのような、歴史を感じさせる店・・・

この店に、一人でも入れるように、なれるだろうか、私も。  

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